1/20、岸田首相は「新型コロナウイルス感染症」を、『感染法』(「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」)上の分類(第6条)を「5類」(インフルエンザ、ウイルス性肝炎、クリプトスポリジウム症、後天性免疫不全症候群、性器クラミジア感染症、梅毒、麻しんなど)に引き下げると表明しました。
国内では、コロナ感染症の拡大により、この3年間、社会生活全般で行動制限や行動自粛が続くなど、日本の経済活動は大きく冷え込んでいました。
ところが、政府は第6波までとは異なり、昨年の第7波では「緊急事態宣言」や「まん延防止」などの行動制限をかけずに乗り切れたとして、今回の第8波でも行動制限はかけていません。
そして、第8波では、新規感染者を受け入れる医療機関では、病床使用率は7割を超えているものの、重症病床使用率は1割程度ということもあり、医療機関がひっ迫する状況にないというのも、今回の「5類」移行への政府判断になっています。
また、飲食店、旅行・宿泊事業者、交通事業者などからは、昨年の第7波の頃から「5類」移行の要請が政府に寄せられていました。
こうした時世により、今回の「5類」移行は社会全体として歓迎する方向です。しかしながら、「5類」移行は良い事ばかりというわけではありません。当然、リスクは市民にも及んできます。
最も懸念されるのは、コロナ感染症にり患した場合の治療費です。現在、コロナ感染症にり患した場合、検査費用から治療費は公費負担です。
コロナ感染によって入院した際の医療費は、基本的に公費で負担されます。更に、PCR検査においても、自治体が検査を委託する医療機関や保健所で検査が必要と判断された人、濃厚接触者と認定された人などの検査費用は基本無料です(ただ、「咳が長引くから検査を受けたい」「微熱が続くから念のため検査をしたい」というように、自主的にPCR検査をする場合は、民間のクリニックで数万円程度の検査費用を自己負担しなければなりません。)。
こうした公費負担が、「5類」移行後、医療費やワクチン接種など、自己負担が発生することが予想されています。
政府は、今年3月末(今年度末)までに結論を出すとしていますが、自己負担が発生することは避けられそうもありません。
更に、専門家の間では、コロナが「5類」に見直されることによる課題としては、①治療費が公費で負担されなくなり、感染者が検査や治療を受けなくなる可能性がある、②ワクチン接種の際に自己負担が発生すれば接種率が低下する可能性がある、③保健所が健康管理をしなくなるため、容体が急変する患者を把握できなくなる恐れがある、④幅広い医療機関での診療や入院が可能となるが、動線分離が難しい医療機関が少なくなく、また実際には医療機関の判断によるので、どれだけ協力が得られるか不明、などです。
行動も自由、「室内でもマスク不要」に対しては、若者は無症状とか2~3日のカゼ程度と軽症で済むなど、若者を中心に歓迎する向きがあるものの、高齢者や既往症のある方などは感染と感染に伴う容態のリスクは高くなります。
「5類移行はいいことだらけ」というわけにはいきません。新型コロナウイルス感染症の類型見直しは、ウイルスの評価のみならず、医療費の負担のあり方、高齢者や既往症の方々への配慮など、今後の議論や判断の行方を注目しなければなりません。
